市場としてのベトナムに着目しよう

中津山 恒

写真は、2017年3月27日に就航したベトナム航空のエアバスA350(羽田空港にて著者撮影)

注目を集めるベトナム

ベトナムは日本企業にとって重要な生産拠点ですが、このところ、日本国内でも存在感を増しています。

厚生労働省によれば、2016年10月末時点の外国人労働者は1,083,769人で、前年同期比175,873人、19.4%の増加となり、過去最高を記録しています。ベトナムは中国に次いで2位で、172,018人となり、前年同期比で15.9%の増加を示しています。

また、日本政府観光局によれば、2016年の訪日外客は過去最高の2,404万人で、そのうちベトナムは23万4千人を占め、前年比26.1%の増加となっています。1人当たり旅行支出でも、アジアでは中国の231,504円に次ぐ第2位で、186,138円となっています。

私とベトナムとの関わり

2015年11月から2017年4月までの約1年半の間に、ベトナムで開催された2つの生産性向上に関わるプロジェクトにトレーナーとして参画し、延べ5ヶ月あまりの期間を現地で過ごしました。1つめは、南部のホーチミンで開催された、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムのいわゆるCLMV 4カ国の生産性コンサルタントを育成するプロジェクトです。2つめは、北部のハノイで開催された、職場改善と従業員満足度向上に関するプロジェクトです。いずれも、座学に加え、従業員満足度を切り口として現地企業の生産性向上を実際に支援し、実践を通じてコンサルタントを育成するというプログラムです。

川崎にはアジア起業家村推進機構(アジア起業家村)という非営利活動法人と、同機構が関わるコワーキングスペースアジアサイエンスカフェがあり、これらのイベントに私もときどき参加させていただいていましたが、前記のプロジェクトに参加するまで、ベトナムにはあまり馴染みがありませんでした。

データで見るベトナムへの関心の高まり

私はIT(情報技術)を専門とする中小企業診断士ですので、世界各国と日本国内でベトナムへの関心が高まっていることを、ITを活用して示してみます。

Googleが蓄積したデータをもとに提供しているサービスの1つであるGoogleトレンドでは、検索に用いられたキーワードや地域の情報に基づいてトレンド(動向)を把握することができます。

ベトナムは生産拠点として、また旅先として、各国から注目されていますので、カテゴリ(テーマ)は「ビジネス、産業」と「旅行」を選びました。検索キーワードは国としての「ベトナム」とし、比較対象にはやはり国としての「中国」(中華人民共和国)、検索種別は「ウェブ検索」を指定しています。

上図はGoogleトレンドの実行結果から著者が作成したものです。数値は、もっとも検索が多かった時点を100として、その相対値で計算されています。以下のグラフも同様です。

2004年1月には、「中国」が84で「ベトナム」が9と、検索回数には大きな開きがありますが、2010年ごろからは「中国」が約50で「ベトナム」が約30と、差が縮まっています。

検索が行われた地域を日本に限定すると、2005年10月に初めて「ベトナム」が「中国」を上回ってからほぼ「ベトナム」が多くなっており、とくに2010年8月以降は一貫して「ベトナム」の方が上回っています。

旅行に目を向けると、2010年8月に逆転して以来、一貫して「ベトナム」が「中国」を上回っており、旅先として注目されていることが窺えます。

日本国内に目を向けると、「ベトナム」が一貫して上回っています。全期間での平均は、「ベトナム」が64で「中国」が9と、大きな開きがあります。

ここ1年ほどで、マスメディアが旅先としてベトナムを取り上げることが多くなったように感じられますが、Googleトレンドのデータでは極端な増加は見られません。

以上のように、世界的にベトナムが注目を集めるようになっており、日本では、それを上回る勢いでベトナムが注目されていることが、検索データから裏付けられます。

数値以上に勢いがあるベトナム経済

ベトナム統計総局のデータでは、2016年におけるベトナムの1人当たり国内総生産(GDP)は2,215米ドルです。世界銀行のデータでは、2015年における日本の1人当たり国内総生産は34,524米ドルですから、ベトナムの15分の1ほどということになります。所得水準を見ても、2014年の1人当たり年間所得が13万円ほど(ベトナム統計総局)で、数値的には購買力はまだまだ低いように感じられます。

しかし、実際に現地で見た状況は、こうしたデータから受ける印象とはかなり異なります。本記事の冒頭で述べた訪日外客(概ね外国人観光客と捉えて構いません)の消費状況にもつながりますが、富裕層と考えられる人数が相当数あります。

街中では、膨大な数のバイクに混じって、たくさんの高級外車が走っています。関税の関係から、日本で買うよりも高い価格が設定されているにもかかわらず、たくさんの外車が走っているのです。また、日系スーパーマーケットで日本のナショナルブランド製品が販売されていますが、現地レートで換算して日本の3倍ほどの価格になっています。その価格で購入できる顧客が十分あるということです。

これは、ベトナムでは貧富の差が激しいということと、発展途上国によく見られる非公式経済(informal economy)が理由にあると思われます。貧富の差については、所得上位1/5の層と所得下位1/5の層とでは所得差に10倍近い開きがあり、しかも年々差が開いているという、ベトナム統計総局のデータがあります。本稿では非公式経済には深入りしませんが、公式な統計に載ってこない取引のことであるとご理解ください。

終わりに

2011年11月から頻繁にベトナムに行って感じたことは、30年くらい前の日本の雰囲気によく似ているということです。右肩上がりの経済成長が続いているので、現在は平均的には裕福とは言えないにしても、非常に活気があります。実際、以下に示す、1人当たり国内総生産のグラフを見ると、日本から30年くらい遅れて、ベトナムが急速に経済成長していることが見て取れます。数値的な伸びと、ベトナムの活気が一致しているように感じられます。以下のグラフは、世界銀行のデータをもとに著者が作成したものです。これを見ると、現在のベトナムの経済が、高度成長期の日本に似た雰囲気であることが感じられると思います。

ベトナムの状況については、日本貿易振興機構(JETRO)や外務省などにデータがありますので、適宜ご覧ください。また、海外展開を検討される際には、かわさき中小企業診断士クラブ川崎産業振興財団の海外展開支援事業川崎市海外ビジネスセンターにご相談いただければと思います。

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