法人事業概況説明書に関心を持とう

中小企業診断士 小谷泰三

 07年夏頃から米国で生じた住宅(サブプライム)ローンの焦げ付きに端を発し、さらに 08年9月のリーマンショックで世界同時不況に陥ったことにより、わが国でも業況が悪化した中小企業への景気対応緊急融資(08年11月~10年3月まで30兆円、今年度36兆円が計上)、いわゆる中小企業への支援策のひとつのセーフティネットの5号認定融資が、市区町村を申請窓口として打ち出されたことはご承知のことでしょう。
その際、認定申請書類の中に法人事業概況説明書のコピーの提出を求めた市区町村が現れました。川崎市では、この書類の提出は求められていませんが、上述の書類を求められている役所に申請に来られた経営者の方で、この書類の存在を知らない方が散見されましたので、この書類についてご存じで無い中小企業の経営者や関係者の方々に、ご理解を深められるよう簡単に説明させていただきます。

つまり法人事業概況説明書とは文字通り、会社のその年度の事業内容についての概況を網羅的に説明したもので、毎年法人税の確定申告書提出時に税務当局が把握するために提出する書類です。

その内容としては、①事業内容 ②支店・海外取引状況 ③期末従業員等の状況 ④電子計算機の利用状況 ⑤経理状況 ⑥要約した損益計算書・貸借対照表、⑦事業形態、⑧主な設備 ⑨売上、仕入、外注費、給料の締切日・決済日 ⑩帳簿類の備付状況 ⑪月別売上金額・仕入金額・外注費・人件費・従業員数等 ⑫当期の営業成績の概要などを表裏一枚の税務所管用紙に記載するものです。(法人事業概況説明書の用紙は、下記の国税庁のホームページの中からダウンロード出来ます)(http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/pdf/021_01.pdf)

従来はこのような事業内容は、長年任意提出の書類として取扱われており、有価証券報告書、営業報告書や会社事業案内書での代用も可能でしたが、06年の税制改正時に法人事業概況説明書の提出が義務付けられたものです。したがってまだ日が浅く、税務署に提出していない法人もあります。多くは税理士に任せ、税理士が分かっているところだけを記載しており未記入の箇所が多く、また、関心を持たない経営者も多く見受けられます。
しかし、この書類の記載項目は良く出来ており、経営者にとっても、ご自分の企業のありのままを凝縮して纏められたアニュアルレポート(年次報告)として大いに活用できるものです。

中小企業の経営者は、是非この書類に注目し、税務署提出用とは切り離してでも、すべての記入できる箇所は埋め尽くし、数年間分を時系列として可能な限り分析を行い、企業戦略や経営革新のヒントを得るために、また営業活動や管理者に対して企業実態の見える化のために活用するには大変優れた書類といえます。

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