DX認定とってみませんか。~どこから手をつけようかと思っている方へ~
- 2026/8/13
- 診断士の視点

中小企業診断士・ITストラテジスト・情報処理安全確保支援士 吉田 高宏
「DX認定制度」という言葉を聞いたことはありますか。
最近、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉をよく耳にします。過去の「診断士の視点」でもDXに関する投稿が数多くなされています。しかし実際には、「何から手をつけるべきか分からない」という経営者の方も多いのではないでしょうか。そこで一つの助けとなるのが「DX認定制度」です。
DX認定とは
DX認定は、「DXを推進するための準備が整っている会社」を国が認定する制度です。 ここでのポイントは、「DXの準備が整っている」ことであり、「DXができている会社」ではない点です。そのため、これからDXを考えてみたい、という会社にうってつけの制度です。
こんな認定は大企業がとるものじゃないの?と思われるかもしれません。
図1の通り、これまで中小企業等の取得者数は1,199者であり、直近1年間(2026年6月時点)では約1.6倍と大幅に増えています。中小企業等においてもDX認定の取組みが広がっていることがわかります。

図1 DX認定事業者推移(出所:DX認定ホームページ※1)
DX認定の取得方法
DX認定取得には、どのような手続きが必要でしょうか。
まずは自社の「DX戦略」を策定し、それを取締役会等での機関承認の上、対外公表します。併せて「DX推進指標を用いた自己診断」を実施し、結果をWebで提出するだけです。詳細は図2を参照ください。

図2 DX認定取得のためのフロー図(出所:DX認定制度申請要項※2)
ただし、ここに大きなハードルがあります。それは「DX戦略の作成」です。この後いくつかDXのよくある失敗を紹介し、DX認定を目指すことで何が変わるのかということについて述べたいと思います。
DXのよくある失敗1
非常に多い失敗が、「DX推進部」のような名称の部署を作って丸投げするパターンです。
経営者としてITが得意領域ではないため、システムの専門家に丸投げしたくなることは理解できます。細かい技術の中身まで関与する必要はありませんが、経営者としてDX推進部に方向性を示す必要があります。方向性とは、「DXで何を実現したいのか」です。例えばDXに取り組む目的がコスト削減なのか、人手不足対策なのか、売上拡大なのか、ということです。
そのような方向性がないまま、DX推進部に丸投げすると次のようなミスマッチが起きます。
飲食業でタッチパネル注文を導入しようとした結果、経営陣から「そんなにコストをかけて、何をしているのか」と梯子をはずされるケースです。DX推進部は人手不足対策を目的として導入しようとしたのに、経営者はDXをコスト削減施策ととらえており、期待値にずれがあったという事例です。
DXのよくある失敗2
2つ目は経営のコミットがないパターンです。
DXを進めると、今までと仕事のやり方が変わります。ベテランの方からすると、長年やってきたやり方を変えるのは自己否定されたととらえる方もいるかもしれません。また仮にFAX受注をやめる場合は自社だけでなく、顧客にも交渉をしないといけません。業務のやり方が変わる以上、反発は当然起こります。
そこで経営者が覚悟を持って「なぜそれをやらないといけないのか」というDXの必要性を訴える必要があります。
しかし、多くの会社では残念ながら、社長が「DX推進部」に作らせた原稿を読むだけなので、従業員にも本気度が伝わらず、現場の抵抗で今まで通りの非効率な仕事のやり方が温存されることになります。
失敗を回避するためのDX認定
DX認定制度は、これらの失敗を回避する上で、有効な仕組みです。
前述の通り、認定には取締役会決議や対外公表が求められるため、丸投げは許されませんし、公表することになるため後にはひけません。
また「DX推進指標を用いた自己診断」によって、自社の現状と不足点を洗い出すことができます。自己診断の評価項目の多くが実はシステム面ではなく、「経営戦略、組織、人材」に関するものだという点も特徴で、自社の今後のあり方を考える上でも役に立ちます。
図3のDX認定制度の認定事業者に対するアンケートでは、約70%の認定事業者が「認定取得がDX戦略の推進に効果があった」と回答しています。また、取得企業の声として、「取得のプロセスが自社を見直す機会になった」、「経営方針の決定に役立った」という意見もあり、システムだけではなく会社全体に良い効果があったことがうかがえます。

図3 DX認定取得のメリット(出所:DX認定制度ホームページ※1)
また、DX認定の取得は、ものづくり補助金の加点対象や日本政策金融公庫の金利優遇などの支援措置を受けることができ、経済的なメリットもあります。
なお、DX認定の取得までの目安としては、一般的に4~6ヶ月程度と言われています。加えてDX戦略を検討する上では営業戦略、人材採用、評価制度、組織設計など多岐にわたる検討が必要となります。このようなことが自社だけでできるのか。正直に言えば難しいケースが多いでしょう。
そのため、中小企業診断士など外部専門家を活用することも有効です。外部の視点を入れることで、議論が前に進みやすくなります。
もし今、「DXについて何から始めればいいのか分からない」と感じているのであればDX認定を起点にしてみてはいかがでしょうか。
参考資料
※1 DX認定制度
DX認定制度(情報処理の促進に関する法律第二十八条に基づく認定制度) (METI/経済産業省)
※2 DX認定制度申請要項
DX認定制度申請要項 本編. 申請ガイダンス














