100年に一度のイノベーションから社会実装へ
- 2026/10/1
- 診断士の視点

自動運転技術を体感
中小企業診断士 重田 義人
私は自動車業界で長年仕事をしてきました。ご存知の通り自動車業界は今、100年に一度の大変革期にあると言われています。電動化や自動運転、インターネットとの結合やシェア保有といった従来からの自動車に関する価値観が根底から覆されようとしています。正に自動車に関する様々な技術、いや、自動車自体がイノベーション期を迎えていると言っても過言ではありません。
今年の夏休み、私は家族でアメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスを訪れました。そこで自動運転によるタクシーに乗車して自動運転技術を体感してきました。今回はこの体験から自動車業界のイノベーションとその社会実装の観点から記事を書きたいと思います。
1.自動車業界を取り巻く環境
CASEという言葉が使われるようになって久しくなりました。この言葉は単に、「走る」、「止まる」、「曲がる」といった自動車の基本的な技術の次の方向性を意味しています。正に今、足元で起こっている自動車のイノベーションの方向性を指し示しています。CASEは以下の単語の頭文字をとった言葉です。
l Connected(コネクテッド):車をインターネットにつなぐ技術
l Autonomous(自動運転):自動運転技術
l Shared/Services(シェアリング):車の共有や移動サービス
l Electric(電動化):電気自動車(EV)化
つい最近まで日本では自動車は、ドライバーが運転して、ガソリンを燃料としたエンジンで走り、保有するなら一家に一台でするものでした。しかし、今は急速にこの価値観が変わりつつあります。そしてこの変化は日本の社会的ニーズの変化と無関係ではありません。例えば自動運転はタクシー運転手やトラックドライバーの人手不足とは無関係ではありませんし、シェアリングは若者の車離れと密接な関係にあります。また、電動化の促進、AIの活用など、自動車はもはや、走って止まって曲がるだけの乗り物ではなくなりつつあり、この変化に対応していくために様々な技術開発が自動車業界では行われています。
2.自動運転技術の体験
ここからは自動運転技術にフォーカスしていきたいと思います。自動運転技術と言えば皆さんもどんな技術であるか、想像は容易にできると思いますが、一方で「まだまだ危険」、「事故を起こしそう」といったイメージをお持ちではないでしょうか?自動車業界に身を置く私でも正直に言うと同じような認識を持っており、日本で社会実装されるのはまだ先の話と思っていました。しかし、今夏、ロサンゼルスで普通に街中を走っている自動運転技術を活用した無人タクシーを利用したことで、その認識は180度変わることになりました。
まず、無人タクシーを呼ぶところから始めますが、私は専用のアプリ「Waymo」を事前にスマホにインストールして利用しました。このアプリは日本語にも対応しています。まだこのサービスはアメリカ国内のどこでも対応している訳ではないようですが、順次拡大をしているようです。このアプリで現在地と目的地を設定すると近辺の乗車場所を地図で指定され、そこで無人タクシーに乗ることができます。タクシーのナンバーなども事前に通知があるため、乗り間違えることはありません。
乗車後も車内のタブレットで利用者名や行き先の確認が実施され、確認が完了すると無人タクシーは目的地に向かって走り出します。私たち家族はロサンゼルスのダウンタウンからサンタマリアまで約1時間程度の道のりの移動に利用しました。道のりも単純な1本道ではなく、日本の都市部のような複雑な交通状況でしたが、無人タクシーは道に迷うこともなく、また他の自動車や歩行者に接触しそうになるといったことも全くなく、非常に安全な運転で走行していたのが印象的でした。目的地までのルート全体と無人タクシーの周囲の状況がタブレットに表示されているのですが、常に最新の交通状況を更新しながら最適なルートを見つけだし、周囲の状況を把握しながら走行しているようでした。家族からは感想は、私の日頃の運転よりも安全運転だった印象のようです(笑)

そして無人タクシーは目的地にほぼ最初に示した時間通りに到着しました。決済もクレジットカードですので非常にスムーズで、目的地に到着したら降車するだけです。そして、そこには次に予約をしている客が待っており無人タクシーは次の客を乗せて走り去っていきました。
この無人タクシー乗車の体験は間違いなく私にとっては衝撃的なものでした。自動運転技術はまだ私にとっては聞いたことがあるだけの技術で、まだまだ安全性の確立などに時間が必要であり、実用化には時間を要する技術だと思っていたら、ロサンゼルスでは既にこの無人タクシーは街中を何台、いや何十台も走っており社会実装されている光景を目の当たりにした訳です。近未来の世界を観たと言っても過言ではなく、正にイノベーションを体感した瞬間でした。
3.日本での社会実装について
この自動運転技術は自動車には、もはやドライバーは不要になることを意味しています。そしてこの技術はアメリカ社会での社会実装を経て間違いなく確立した技術になりつつあり、この確立した技術は日本でも間違いなく活用されると思います。安全面など法的な整備、タクシー業界など既存の業界との調整など乗り越えるべきハードルはまだ残っていますが、日本社会での実装も確実に進むことが予測されます。
日本ではまだまだ自動車はドライバーが運転する前提での産業・社会構造になっています。ですが皆さん、想像してみて下さい、自動車にドライバーが不要になる社会を。
物流やタクシー、介護におけるお年寄りの送迎、子ども達の学校や塾への送迎などなど、今までドライバーが車を運転して担っていた仕事が大きく変化することは明白です。また、地方や過疎地域における移動手段の改善に繋がることも期待されます。人手不足で移動手段の確保が困難であった地域においても自動運転技術によって移動手段が確保されることで、地域の活性化のきっかけになるかもしれません。
自動運転技術の日本社会への実装を通じて、新たなニーズやそれに応える新たなサービスや商品が生み出されることが期待できます。同時に、人手不足や地方の過疎化などの社会的な問題の解決手段となる可能性もあります。社会実装は単に便利な社会の実現だけに留まらず、社会的課題の解決や経済の活性化など様々なポジティブな影響が期待できます。
産業・社会構造の変化には時として痛みを伴うケースもあります。大規模なイノベーション期において、その技術の実装段階においては避けては通れない道でもあります。
このような産業・社会構造の変革期の中で、常に時代の一歩先を見据え、変化を前向きに捉えていくことで、中小事業者は今までに存在していなかった新たなニーズの出現をビジネスチャンスに変えることができる一方、それは、今、正に存在している社会的課題の解決に大いに貢献する可能性も秘めていると考えています。
イノベーションという言葉を聞いたことはありましたが、自動運転技術の体験は間違いなく私にとってはイノベーションの体感でした。
まずは、日本で自動運転の無人タクシーが早く街中を走り回る近い未来を楽しみにしつつ、次は社会的構造の変化を体感できればと考えております。












