「経営・管理」在留資格の改正と地域経済 ―外国人経営者と中小企業のこれから

中小企業診断士 中込 美津子 

外国人経営者は地域経済の一員

外国人材というと、これまでは「雇用する人材」として語られることが多くありましたが、近年、日本で会社を設立し、事業を営む外国人経営者が増えています。出入国在留管理庁の在留外国人統計によれば、在留資格「経営・管理」の在留外国人数は、2016年末の21,877人から、2025年末には46,781人へ増加しています。(図1)特に2022年以降は増加傾向が明確であり、外国人経営者の存在感は地域経済の中でも高まりつつあります。

図1 在留資格「経営管理」の在留外国人数推移

出所:出入国在留管理庁、e-Stat「在留外国人統計」を基に筆者作成。各年12月末時点

外国人経営者の増加は地域事業者にとってのビジネスチャンス

外国人が経営する会社の業種は様々ありますが、日本政策金融公庫総合研究所の以下の報告書では、宿泊業・飲食サービス業を筆頭に様々な業種にわたっています。(図2)

図2 外国人経営企業の業種           図3 外国人経営企業の特徴(複数回答)

出所:日本政策金融公庫総合研究所「日本における外国人起業の実態」(2025年11月20日)p.6

外国人経営者が日本で事業を始め、継続していくには、多くの地域事業者との関係が必要です。事務所や店舗の賃貸、内装や設備の整備、看板やチラシの製作、ホームページを整備、仕入先探し、会計・労務体制の整備、販促など事業運営にはさまざまな取引が発生します。つまり、地域の中小企業にとっては、外国人が経営する会社が、取引先、顧客、協業相手になる場面も増えてくるということであり、ビジネスチャンスにもなるということです。

また外国人経営の飲食店や小売店は、「出身国・地域の商品やサービスを日本で販売する」ことも多く(図3)、これによって商店街が多様化し、にぎわいをつくり、空き店舗の活用にもつながります。そして外国人経営者は母国との人的ネットワークや商流を持っていることも多く、立地する地域の企業にとっては、海外市場や在日外国人コミュニティとの接点になり得ます。たとえば、地域の食品、日用品、工業製品、観光サービスなどが、外国人経営者のネットワークを通じて、母国向けの輸出、訪日客向けの商品開発、多言語対応サービス、地域に暮らす外国人向けの新たな販路につながる可能性があります。単に「海外に売る」というだけでなく、相手国の嗜好、価格感覚、宗教・文化上の配慮、販売チャネル、決済方法、プロモーションの仕方など、日本企業だけでは見えにくい情報を得られる点にも意味があります。

外国人経営者との取引での留意点

一方で、外国人経営者との関係を一時的な取引で終わらせず、信頼関係をもって継続的に取引していくには、丁寧な合意形成を行う姿勢が求められます。日本の企業同士でも必要なことではありますが、特に言語や商習慣の違いがある場合には、口約束に頼らず、見積範囲、納期、支払条件、契約内容、品質基準を文書や図表で共有することが大切です。また在庫や物流のリスク分担、販売価格や手数料の設定、品質不良や納期遅延時の対応などは事前に確認しておく必要があります。

事例から見える地域とのつながり

外国人経営者が地域に溶け込んだ好事例として挙げられるのが、仙台市の国家戦略特区のスタートアップビザ制度を活用し、仙台駅近くで英会話教室を開業した、ハワイ出身のジェイソン・ルイス氏です。この事例で注目したいのは、制度を利用したことだけではありません。地域で人と会い、協力者を得て、場所を確保し、顧客に必要とされるサービスとして事業を形にした点です(*1)。外国人経営者が地域で事業を続けるには、行政手続きだけでは不十分で、顧客、仕入先、協力会社、金融機関、専門家、地域コミュニティとのつながりが必要です。(下記*1参照)

制度改正で厳しくなった「経営・管理」在留資格

外国人が日本で会社経営をする上には、適切な在留資格を保有している必要があります。永住権等の保有者以外は「経営・管理」という在留資格が必要です。(他にも高度専門職第1号ハなどの在留資格がありますが、本誌では割愛します。)この「経営・管理」の在留資格を取り巻く制度が最近大きく変わりました。出入国在留管理庁は、在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の一部改正を行い、令和7年10月16日に施行しました。

主な改正内容として、申請者が営む会社等で1人以上の常勤職員を雇用すること、3,000万円以上の資本金等を備えること、申請者または常勤職員のいずれかが一定の日本語能力を有すること、経営者本人の学歴・職歴等を確認することなどが示されています。さらに、在留資格決定時に提出する事業計画書については、具体性、合理性、実現可能性があるかを評価するものとして、経営に関する専門的な知識を有する者による確認が義務付けられました。施行日時点では、中小企業診断士、公認会計士、税理士がこれに該当するとされています。(下記*2参照)

制度改正は地域の小規模事業者にも影響する

この制度改正により、外国人経営者には、これまで以上に実体のある事業運営が求められるようになります。形式的に会社を設立するだけではなく、一定規模の資本、常勤職員の雇用、日本語能力、経営者としての経験、具体性と実現可能性のある事業計画などが重視されます。

このことは、日本で新たに事業を始める外国人だけでなく、すでに地域で事業を営んでいる外国人経営者にも影響します。特に、飲食店や小売店などを小規模で営む事業者にとっては、資本金や雇用の要件を満たすことが容易ではない場合があります。これまで地域で営業を続けてきた店舗であっても、更新や事業継続の局面で、厳しい判断を迫られる可能性があります。これまで以上に経営改善を図り、日々の資金繰りを含む経営管理による財務の健全性、安全性の向上が必要になります。地域に根ざして営業してきた外国人経営者が事業継続に不安を抱える場合、その影響は、取引先、雇用、商店街のにぎわいなどにも及びます。つまり、この制度改正は、単なる在留資格の問題ではなく、地域の店舗や取引関係にも関わる経営環境の変化として捉える必要があります。

地域の多様な事業者と共に成長する

これまで増加傾向にあった在留資格「経営・管理」の外国人経営者数が、制度の厳格化によって今後どのように変化するかは、まだ見通しにくい状況です。しかし、すでに地域に根ざし、事業を続けようとしている外国人経営者は、地域経済を支える事業者の一員です。中小企業にとって重要なのは、地域にある多様な事業者と信頼関係を築き、互いに事業を継続・発展させていく視点です。制度改正をきっかけに、外国人経営者を地域経済の仲間として捉え直すことが、これからの中小企業経営に求められているのではないでしょうか。

川崎中小企業診断士会ができること

こうした状況に対して、川崎中小企業診断士会は、地域の中小企業と外国人経営者の双方を経営面から支える役割を担うことができます。「経営・管理」の在留資格の申請手続きそのものは行政書士などの専門領域ですが、中小企業診断士は、事業計画の具体性・合理性・実現可能性、売上計画、資金繰り、販路開拓、店舗運営、雇用体制などを整理し、事業として継続できる形に整える支援を行うことができます。また、外国人経営者と取引する地域企業に対しても、取引条件の整理、見積範囲や契約内容の明確化、インバウンド対応、海外販路の可能性検討などの支援が可能です。川崎中小企業診断士会は、外国人経営者と地域の中小企業が共に事業を続け、成長していくための伴走支援の体制を整えています。

出所:
(*1) 仙台市国家戦略特区「スタートアップビザ制度の活用で起業に成功!」
https://sendai-tokku.jp/interview/succeeded-startup-visa/

(*2) 「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」
https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html


関連記事

Change Language

会員専用ページ

ページ上部へ戻る